これまで2年ほどエンジニアとして仕事をしてきて、2022年4月からプロダクトマネージャー(兼エンジニアですが)になり、UX(User Experience)・ユーザー中心設計(HCD)・ユーザビリティに興味を持ちました。
優れたUXを実現するための設計思想である「ユーザー中心設計(UCD: User Centered Design)」について体系的にまとめられたユーザビリティエンジニアリング(第2版)―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法―を読んだので、学んだことや所感(=読書メモ)をまとめようと思います。
本書は以下の構成であり、本記事は「Introduction」についての読書メモです。
- Introduction
- Part1 調査・分析
- Part2 設計
- Part3 評価
- Ending
ユーザビリティとは
まず、ユーザビリティは国際規格 ISO 9241で以下のように定義されています。
特定のコンテキストにおいて、特定のユーザーによって、ある製品が特定の目標を達成するために用いられる際の、効果、効率、ユーザーの満足度の度合い
定義の中に「特定の」という言葉が3回も使用されているのは、ユーザビリティの高さは一般的に(公式のように)評価できるものではなく、ユーザーや利用状況、目標によって評価が変わるからです。
「効果」、「効率」、「満足度」は以下のように説明されています。
- 効果
- ユーザーが目標を達成することができるかどうか(ユーザーの課題は達成できるか)
- 効率
- なるべく最短経路で目標を達成できるかどうか
- 満足度
- ユーザーに不愉快な思いをさせていないかどうか
ユーザビリティは日本語で「使いやすさ」としてよく使われますが本書ではこれは大きな間違いだと説明されています。(ちなみに僕も「使いやすさ」と思っていたので、この時点で序盤にしてこの本を読んでよかったなと思いました…)
なぜ「使いやすさ」が間違いなのかというと、「ユーザーへの思いやり」「ユーザーフレンドリー」のような主観的な概念と混じることで「あれば嬉しいけど、なくても困らない」というレベルの要求であると誤解してしまうからです。
ユーザービリティは「使いやすさ」ではなく「使用可能性」「使えるかどうか」と認識するのがとても重要であり、
ユーザビリティに問題がある=使えない(使用不可能)
となります。(つまりめちゃくちゃ大事)
ある製品の品質が要求以上だったとしても、その機能や性能をユーザーが使いこなすことができなければユーザーは目標を達成(課題を解決)することができないということを肝に銘じておかなければならないと思いました。
UXとは
UXはUser Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略で、日本語では一般的には「ユーザー体験」と言われています。
国際規格では以下のように定義されています。
ユーザエクスペリエンスとは、製品、システムまたはサービスを使用した時、および/または使用を予測した時に生じる個人の知覚や反応
ソフトウェアの場合、UXはユーザーインターフェイス(UI)という形でユーザーと接することになりますが、そのUIはユーザーニーズやビジネスゴールなどのあらゆる要素が凝縮されています。
UXの構造を表した有名なモデルがジェス・ジェームス・ギャレットが提唱した「The Elements of User Experience」です。

上の画像は以下の記事からお借りしています。
ユーザーインターフェイス(表層)の下に「骨格」「構造」「要件」「戦略」があることから、UXは製品を開発する全ての工程によって形成されること、全ての工程がUXに影響を及ぼすことがわかります。
つまり、製品開発の1番最初(企画や戦略立案段階)からコツコツ積み重ねなければ、優れたUXを実現することができません。
ソフトウェアの「綺麗なUI、押しやすいボタン、見やすい文字」の画面は優れたUXであるとは決していえません。(もちろん優れたUXを構成する一つの要素ではある)
「The Elements of User Experience」を調べた時に、The Elements of User Experience ~5段階モデルで考えるUXデザインという本を見つけたのでもっとUXを勉強したくなった時にまた読んでみようと思います。(多分近いうちに読む)
ユーザー中心設計とは
ユーザー中心設計(UCD: User Centered Design)は優れたUXを構築するための設計思想です。まず、設計思想なので個別の設計手法のことを指すわけではありません。
また、ユーザー中心設計と人間中心設計は同義語です。日本では人間中心設計推進機構(HCD-Net)が実施する認証制度で「人間中心設計スペシャリスト(認定HCDスペシャリスト)」と「人間中心設計専門家(認定HCD専門家)」があります。(機会・余裕があれば取得したい)
UXは「戦略→要件→構造→骨格→表層」の順に構成されますが、UCDを取り入れることでこれら全ての工程を常にユーザー視点に立って行うことができると解説されています。
UCDのプロセスは以下のサイクルで実施します。
- 調査:ユーザーの利用状況を把握
- 分析:利用状況からユーザーニーズを探索
- 設計:ユーザーニーズを満たすような解決案の作成
- 評価:解決案を評価
- 改善:評価結果をフィードバックし、解決案を改善
- 反復:評価と改善を繰り返す(←ここが最重要)
僕は4月、5月にかけて新規プロダクト開発に向けたユーザーインタビューを複数回したのですが、これもUCDのプロセスの1つだったのだと読んでいて気づきました。(調査・分析にあたる)
UCDのプロセスを見ればよくわかりますが、UCDとはユーザーの要求や不満(こんな機能が欲しい・ここを変更して欲しい)に対応することではありません。
UCDを取り入れた製品開発をすることで
・製品を開発したものの全く使われない・売れない
・開発工程の終盤で重大な問題が発生して大幅な手戻りが発生する
という最悪な事態に陥ることを防ぐことができます。
最後に
まだ本書の序章を読んだだけですが、個人的には(これまでこの分野に触れてこなかったせいで)とても学びがあったと感じています。
プロダクトマネージャーの仕事の中にも「UX」がありますが、この抽象的なアルファベット2文字の言葉が指す意味がかなりクリアになったと思います。(そして自分が既にUXに関する業務をしていた、つまりユーザー中心設計を取り入れていたこともはっきりとわかりました)
次の「調査・分析」でも新たな学びを見つけてどんどんアウトプットしていきます。
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